「わたしも今朝聞いたんだけどさ」
ポカン顔のわたしに、さやちんがとうとう切り出したとき。
「ぎゃっ!?」
誰かに背後から突然抱きつかれ、心臓が大きく飛び上がった。
バクバクと大きな音を立て、体温が一気に上がる。
わたしの色気のない叫び声に、後ろにいる誰かが、くすくす笑った。
「みくるってば、いくらなんでもびっくりしすぎ」
聞こえた声に、わたしははあっ、と息を吐いて。
呆れ顔で振り返る。
「も、なんだあ……可奈ちゃん……」
ジャージ姿の可奈ちゃんが、いたずらっ子の笑顔を浮かべて立っていた。
アッシュブラウンのポニーテールが、ふわふわ揺れる。
「そういえば次の時間、可奈ちゃんたちのクラスだったね」
わたしたちの授業が終わる時間が遅かったせいで、気づけば体育館には、他クラスの生徒が入り口から続々とやってきていた。