さやちんの言葉に、どっと体から力が抜ける。
小さくなっていた姿勢を正して、わたしは安全確認を終えた昇降口へと、足を踏み入れた。
「でもまさか、あのふたりがねえ……」
「ちょ、ちょっと、さやちん」
ローファーを脱ぎながら、感心したように声をこぼしたさやちんに、しーっ、と人差し指を立てる。
「わたしもさやちんも、知らないはずの情報なんだから」
「そうだった」
わたしの指摘に、さやちんはえへ、と肩をすくめた。
誰かに聞かれていないかハラハラしたけれど、登校中の周りの生徒たちはみんな、自分たちのおしゃべりに夢中なようだった。
……よかった。
そう安心したのも束の間。
わたしの心は、じくじくと痛み出す。