「もう少し、こっちおいで」 三澄くんが、そっとわたしを引き寄せて。 傘を滑り落ちてくる雫から、かばってくれた。 わたしたちの間にあるのは、……制服が触れるか触れないかの、わずかな距離。 わたしと三澄くんの『いつも』よりも遥かに近づいた、今だけ、限定の距離。 街灯の明かりが、濡れたコンクリートに反射している。 ゆらゆら。 ゆらゆら。 オレンジ色が地面で揺らめくたび、……わたしのこころも、とどまってはいられなかった。