「いたた…た…」



菜月に何も言えないまま、相変わらずの毎日を過ごしていた俺。



今日の体育の授業はサッカーだった。



思いっきりボールにつまづき、両膝はすり傷だらけ。



「傷が少し深いが、消毒したから大丈夫だろう。残りは見学させて貰えば?」



「はい、そうします…」



菜月が好きな保険医の矢野センに傷の手当てをしてもらい、何とも情けない俺。



ボールでつまづくなんて、菜月に見られなくて良かった…。



「杉原 啓太、どうせ見学するならば、少し話をしないか?」



「あ、はい…」



何の話だよ?



保健室なんて来る用事もないから面識ないし、菜月の好きな奴だし…



複雑なんですケド…。



「お前、ちゃんと食ってるか?」



「はい、朝食もきちんと取ってから来ますけど…」



「そうか、なら好き嫌いは?」



「好き嫌いはありません」



治療したまま、向かい合わせに座っている俺達。



矢野センが質問して、俺が答えるだけ。