「盗んだんです。」

「は?」

「パスケース。拾ってなんかいません。盗んだんです。」

「マジで言ってんのか?」

「はい。マジです。」

「どこで?」

「職員室で。」

「いや…無理だろ。他の先生だって…。」

「だからですよ。まさかそんな所で、なんて誰も思わないでしょ?」

「お前、おかしいよ。」

「先生も、ちゃんと鞄は閉じて。不用心ですよ。私みたいな変質者に狙われますよ。」

先生の眉間の皺はどんどん深くなっていきました。
ただでさえハヅキくんのことで大変なのに、生徒に盗みまでされて。

「なんで…そんなこと…。」

「先生の気を引きたかったから。なんで無視するの。」

「無視?してないだろ。」

「してます。あんなことしたクセに何事も無かったみたいに他の子と平等に扱って。」

「平等の何が悪いんだよ…。」

「じゃあ先生はみんなに平等にキスしたりするんだ。」

「そんなわけないだろ!」

そんなわけない。
そう言って先生は怒ったけど、でもそういうことじゃないですか?
平等を主張するなら、みんなにだってそういうことするんでしょ。

そうじゃないって言うんなら、私を平等になんて扱って欲しくないです。
怒りでも憎しみでも嫌悪でもなんでもいい。
私を特別に見て欲しいんです。