「先生は?探し物ですか?」

「え、あ…、あぁ。ちょっとな。」

「見つかりましたか?」

「いや…。」

「ふーん。」

「お前は?だからなんで俺を待ってたんだ?」

「力になれると思って。その、先生の探し物の。」

「力?なんで?」

「これ。」

ポケットからパスケースを出して、先生に近付きました。

その頃の私の席は、廊下とは反対側。
窓側の前から三番目でした。
先生はドアから入ってきて、まだ数歩しか進んでいなかったので、私とは距離が開いてました。

その距離を埋めるように、先生に歩み寄りました。

先生は一度廊下のほうを振り返って、それから私を見て、斜め前のほうへ体をずらしました。

先生の後ろには黒板。
右下にその日の日直の名前が二人分書かれていて、触れた先生のジャージの肩のところが汚れてしまいそうでした。