先生、私がヤリました。

プリントを提出して、また通りすがりに手を伸ばして、サッとパスケースを抜き取りました。

びっくりするくらい、チョロかったです。
こんなに簡単にいくなんて。
私、スリ師の才能でもあるのかもしれませんね?

普通、犯罪って人目の少ないところで起きるって思うじゃないですか?
だから人が多いと警官心も薄れるんですよね。

まさか、ここでって思うんでしょうね。
誰も私のことなんて気にしてないし、本当にいいの?ってくらいにあっさりと終わりました。

その日も陸上部の練習がありました。
部活って副顧問が居たはずなので、こんな時くらい先生は早く帰宅すればいいのに、部活にも毎日参加してました。

部活が終わるのはいつも夕方の六時過ぎだったので、私はずっと教室で待ってました。
何度か見回りに来た教師に、友達を待ってるんだとか、宿題を提出出来てないとか、何だかんだと言い訳をしながら。

本当はすることなんて何も無かったから、ただジッと椅子に座って、先生のパスケースを眺めていました。

匂いを嗅いだり、先生の匂いなんてしない、ただの革製品だってガッカリしたり、
ハヅキくんの顔を目に焼き付けたり、カッターナイフで奥さんの首に薄く痕を付けたり。
横に、スッと。