先生の舌の熱を感じました。

こういう時って漫画やドラマなら混乱しちゃって、何がなんだか分かんなくなっちゃいそうじゃないですか。

なのに私は不思議とすごく冷静でした。
Dの時よりもずっと。

先生のやわらかい舌の感触と、生ぬるい熱を絶対に忘れたくなくて、そのキスを深く求めました。

くちびるが離れて、先生はベンチから立ち上がりました。

「今日のこと、俺は多分、後悔する。」

「後悔?」

「あぁ。」

「私はしない。」

「俺はするよ。お前は正しい大人になれ。」

そう言って、先生は歩き出しました。
ベンチに残されたまま、先生の味を思い出そうとしました。

正しい大人になんかなれなくてもいい。
こんな風に扱ってくれるなら、私はずっと間違ったままでいい。

奥さんとハヅキくんが大切だって言いながら、生徒に悪いことをする先生が堪らなく愛おしかったです。

もっともっと常識外れなことして、
私は先生と特別になりたかった。

そうなっていいよって言われた気がしたんです。