先生、私がヤリました。

その日の夜から、次の日のお昼過ぎくらいまでは、Bとメッセージのやり取りをしてました。

怖くて親に言い出せないとか、まだ電話は来てないとか。
学校からの電話も無いし、多分学校にも知られてないはずだとか、C達の言う通り、また繰り返さないように脅しただけなのかなとか。

昨日はお泊まりの予定だったのに帰ってきたBに、お母さんは不思議そうにしていたそうです。
Aの体調が悪くなっちゃったって嘘をついてしまったと私にだけ懺悔しました。

結局本当に警察の人が私の番号にも連絡してくることは無くて、夕方くらいに先生の家の近くまで散歩に出ました。

この日はただの散歩のつもりだったので、普通の私服です。
ぶらぶらと歩いてたら、後ろから声をかけられて、振り返ったら先生が居ました。

「先生…?」

確か五時くらいだったと思います。
そう思えないくらい、六月にはもうすっかり陽が長くなっていました。

昼間と全然変わんないから時間を錯覚してしまいそうでした。

先生はコンビニのビニール袋を腕に下げてました。

「お買い物ですか?」

「ん?あぁ、うん。」

「何を買ったんですか。…あ、すみません。聞くことじゃないですよね。」

「いや、別に。醤油が切れてるの忘れてたんだって。パシリだよ、パシリ。」

先生はおどけるような言い方をしました。
奥さんからおつかいを頼まれたみたいです。

先生は奥さんの物。
毎日毎日同じ家で、先生は奥さんの物。
寝ても覚めても隣には奥さんがいる。
一番近いところに。手を伸ばせば触れられる距離に。
先生は奥さんの物。

その感情は、怒りに近かったかもしれません。