その日、先生からの返信はありませんでした。
学校からの折り返し電話もありません。

私が学校を休んでる時、先生はどうしてるだろうって思いました。
辛い時期なのに、平気そうな顔で、変わらず教師を貫いてるのかな。

家ではどんな風に振舞ってるんだろう。
奥さんとの関係はどうなっているだろう。

もしもハヅキくんが発見されて、私が逮捕されて、
先生達家族は世間の好奇な目に晒されても、家族で助け合って、絆を深めて、今まで通り愛し合って暮らしていくんだとしても、それでも良かった。

だって、先生の一番深いところ、奥の奥にこれからずっと潜んでいくのは私だから。

人間って不思議だと思いません?

例えば百個。どんなに素敵な感情や幸せをくれていた人でも、たった一個の嫌な行動のほうが記憶に残っちゃうじゃないですか。

どれだけ良いことをしてくれても、全部嘘みたいに無かったことになる。
嫌なことされたなってそれだけがシミみたいにこびりついて消えなくなる。

そっちのほうが記憶に残るなんて嫌だけど、あの頃の私はそれでも良かった。
先生に忘れられたくない。

ただの教え子として、時々ふと思い出されるかどうかの存在になんてなりたくなかった。

先生の人生を、私は変えたんです。
今までの何人もの教え子の中でたった一人。
私だけが。