俺はおねーちゃんに会いたかった。
はっきりとした、会いたいって気持ちがずっとあった。
それを口にしたことは無い。
口にしてしまえば何もかもが壊れる。
いや、壊せることを知っていた。
高校は日本の学校に通いたい。
そう話した時、父は反対した。
「十年も経ったなんて思えない。十年しか経ってないんだよ。世の中そんなに甘くない。ゲームみたいにハヅキを傷付けようと考える奴らがいくらでもいる。お前はお前が思ってるよりも有名人だ。きっと後悔する。」
父はそう言って俺を説得した。
だから俺は父に言った。
周りの目なんかどうだっていい。
俺は自分の意志で日本に行く。
何を言われたって、好奇の目に晒されたって自分の人生から逃げたくない、と。
おねーちゃんは俺に幸せになってと願っていた。
正しい人になってって。
俺はおかしいのかもしれない。
あの暮らしの中でおかしくなってしまったのかもしれない。
でも、おねーちゃんとの暮らしを無かったことには出来ない。
それをゼロにしてしまったら、俺は全部、正しくなくなってしまう気がした。
父は俺の意志が固いと解ってくれて、折れた。
母は、俺の日本帰国に、一度も反対しなかった。
父と二人だけの海外での生活。
世間からのバッシングも何も無い。
腫れ物も居ない。
母はようやく、幸せになれたのだろう。
はっきりとした、会いたいって気持ちがずっとあった。
それを口にしたことは無い。
口にしてしまえば何もかもが壊れる。
いや、壊せることを知っていた。
高校は日本の学校に通いたい。
そう話した時、父は反対した。
「十年も経ったなんて思えない。十年しか経ってないんだよ。世の中そんなに甘くない。ゲームみたいにハヅキを傷付けようと考える奴らがいくらでもいる。お前はお前が思ってるよりも有名人だ。きっと後悔する。」
父はそう言って俺を説得した。
だから俺は父に言った。
周りの目なんかどうだっていい。
俺は自分の意志で日本に行く。
何を言われたって、好奇の目に晒されたって自分の人生から逃げたくない、と。
おねーちゃんは俺に幸せになってと願っていた。
正しい人になってって。
俺はおかしいのかもしれない。
あの暮らしの中でおかしくなってしまったのかもしれない。
でも、おねーちゃんとの暮らしを無かったことには出来ない。
それをゼロにしてしまったら、俺は全部、正しくなくなってしまう気がした。
父は俺の意志が固いと解ってくれて、折れた。
母は、俺の日本帰国に、一度も反対しなかった。
父と二人だけの海外での生活。
世間からのバッシングも何も無い。
腫れ物も居ない。
母はようやく、幸せになれたのだろう。



