リズちゃんについては、正直憶えていることはほとんど無い。

俺の五歳の誕生日に、プレゼントだよとおねーちゃんが連れてきた女の子。
髪の毛がすごく短くて、絵本を沢山読んでくれた、それくらいの思い出だ。

家の中ではおねーちゃんと二人きりか、おねーちゃんが居ない時は長い時間一人だったから、友達が出来たことは嬉しかったし、リズちゃんが来なくなってからはまた一緒に遊びたいなと思ったことはある。

でも、本当はおねーちゃんがずっと一緒に居てくれるのなら、それだけで良かったのかもしれない。

「リズちゃんにはもう会えないの?」と、聞いたことがある。

おねーちゃんは「悪い人間なの。友達なんてやっぱり要らなかったでしょ。」って、そんな感じのことを言ったと思う。

当時はあんまり理解出来ていなかったけれど、今になって思うんだ。

おねーちゃんが居なくなってしまったことに比べれば、取るに足らないことだったって。

リズちゃんが遊びに来なくなった本当の理由が、あの部屋でおねーちゃんに殺されていたから。
俺も一緒に居たあの部屋で。

それを大きくなるまで知らずに過ごしてこれたのは、どんなに寂しくて友達が欲しかった幼児でも、結局おねーちゃんが傍に居てくれればそれで良かった。
だから追求しなかった。

死体損壊までされたリズちゃん。
何故、なんの為にそこまでしたのかは、明かされていない。