少女はこれより検察へと送致され、検察官の取り調べを経て、今後の処遇が決まっていく。

少女が更生を果たし、外の世界で生きていく将来はいつかは必ずやってくる。
その時に彼女の心に巣食う物は一体何であるのか、興味が無いと言えば嘘になる。

変わらず「先生」への想いを、まだ捨てられずにいるかもしれない。

けれどどうか、自身が奪った命や他者の尊厳。
それがどれだけ尊く、大きな物であったかを理解し、行いを悔い改める心が芽生えることを願うばかりだ。

押収物の中にぐちゃぐちゃになった一本の線香花火があった。

少女が友人達と約束した、夏休みになったら一緒に火をつけようと約束した線香花火。

あの花火に火が灯ることは二度と無い。

証言に対して必要な物は全て押収した。
少女が話していた、先生のカバンから盗んだパスケースも証拠として先生から預かっている。

先生は気付いていたのだろうか。
ファスナー付きのコイン入れの中に、折り畳まれた薄い紙。

「一生、好きだよ。」

少しクセのある丸っこい文字。
成就しないまま、少女の恋は死んでしまった。

好きだからヤッた。
ただ恋をしていたから。

そう繰り返した少女の叫びを、この悲しい事件を、俺は一生、忘れることは無いだろう。