今日の聴取の時間が終わって、女性看守が少女を連れに来た。

少女は最後に「やっぱりバレる前にハヅキくんと先生を会わせれば良かった」と言った。

そうすればハヅキくんはあんなに泣き叫んだり、怖がることも無かったのに、と。

先生とハヅキくんに対する人間らしい感情と慈しみ。

それとは正反対の、先生の妻、リズちゃん、リズちゃんの母親への冷たい無関心。

一人の少女の中に共存する異質さが不気味に感じられた。

十五歳と十ヶ月。
幼児を誘拐し、五ヶ月に渡る監禁。
その間に少女殺害。死体損壊。

少女失踪から、誘拐されていた男児が保護され、失踪していた少女は既に殺害されていたこと、損壊された遺体は、加害者宅のベランダ、段ボールの中に土で埋められていたことが報道され、世の中を震撼させる世紀の未成年事件となろうとしている。

お祭り騒ぎの世の中のことなど一切気にも留めず、それが自身が起こしたことであることすら理解していないように見える、至って冷静な少女に、こちらの常識や感情すら揺さぶられる感覚になり、狂気を見た気がした。