先生、私がヤリました。

先生にとっては意味の無い「ごめんなさい」だったけど、「好き」はもっと意味が無いって分かってたから。

「先生、すぐに私の家に…。あぁそっか。ダメですね。私、逮捕されるんだった。警察にすぐに来てくださいね。きっと連絡が入ると思います。それじゃあ…先生、さよなら。」

「おいっ!ちょっと…」

先生が何か言いかけました。
私は電話を切りました。

先生の言葉は持っていけない。
きっと私、すごくすごく、引きずってしまうから。

「おねーちゃん?」

「ハヅキくん。もうすぐパパとママに会えるからね。」

「おねーちゃんは?」

「もうさよならだよ。」

「なんで?」

「お姉ちゃんは悪い人だから。ハヅキくんはヒーローだから。悪い人が負けたらヒーローとはもう会えないの。」

そこで、若い刑事さんが室内に上がってきました。
ちゃんと靴を脱いで。

こんな時でも習慣って忘れないんだなぁなんて思っちゃいました。

「さぁ、ハヅキくん。こっちにおいで。」

「ヤダ!」

私はハヅキくんを抱っこして刑事さんに引き渡しました。
私の服にしがみついて離れようとしてくれなかったけど、刑事さんに強く引かれて、弱いハヅキくんは負けました。

おねーちゃん!おねーちゃん!って泣き叫びながら、刑事さんに抱きかかえられたまま、玄関の外へ連れていかれました。

外に出てしまっても、ハヅキくんの泣き声が響いてましたよね。

ハヅキくん、大丈夫だったかな。
すごく久しぶりのお外だから目が痛くなったり具合悪くなったりしてないといいけど。