先生、私がヤリました。

数秒間、沈黙が流れました。

先生が呼吸する音が微かに聴こえたのと、
刑事さん達がジッとこっちを見ている視線だけを感じました。

「…何を?」

「ハヅキくん。」

「ハヅキ?」

「ハヅキくんを誘拐したのは私です。」

「何言ってんだ…?お前な、俺をおちょくるのもいい加減に…」

「嘘じゃないです。今、警察の人がうちに来てます。ハヅキくんもちゃんと居ます。」

自分で言えて良かったって思いました。
人づてに言われるんじゃなくて、私の口で先生に告げることが出来て良かったです。

「本当に言ってんのか?」

「本当です。」

「なんで…そんなこと…。」

「先生が好きです。」

「…。」

「私、先生が大好きです。誰よりも先生の特別になりたかった。好意じゃなくてもいい。憎しみでもいい。先生に傷が残せるならそれでも良かった。ずっと私を忘れないで欲しかった。でも、もう無理なんですよね。」

「そんな…そんなことしなくったって俺はお前のことだって大事な生徒だった。なんで…。」

「同じじゃダメなんです。みんなと同じじゃ私は嫌だった。私だけの特別が欲しかった。」

若い刑事さんが腕時計を見ました。
そしてあなたも頷きましたよね。

「先生…私…」

最後にもう一度。
もう一度だけ好きだって言おうとしました。

でも私の口から出たのは「ごめんなさい。」でした。