その時が初めてですよね。
警察がマンションの防犯カメラを調べたのって。

その日のうちに管理人さんが訪ねて来ました。
大丈夫?って。

「そんなことよりそちらのほうが大丈夫ですか?」

「え?あぁ、こっちは大丈夫だよ。なんとか誤魔化せたし。」

「叱られました?」

「まぁ…、マンションを管理する上で防犯対策としては最悪だからね。」

管理人さんはカラッとした声で笑いました。
謝る私に、「それ以上のことしてもらってるから。」って言いました。

それ以上っていうのは、さっき言った「カメラを壊してもらう為のお礼」…、だから、体でお礼したことですよ。

そのことなんですけど、まぁちょっと言い方が気持ち悪いなとは思いましたけど、助けられたのは事実なので笑顔でお礼を言いました。

「なんでカメラ、壊したの?警察が来たことでマズいことやってるなとは思ったけど…。」

管理人さんは声をひそめて言いました。
警察の人が来た時とは違って、玄関の内側に入ってもらってました。
だってまたお隣さんに聞かれれたらたまんないじゃないですか。

「内緒です。」

わざと甘えるような声で言った私から管理人さんは目を逸らしました。
どことなくそわそわしてるようにも見えました。

もっと協力するからとか、またお礼をだとか言われても面倒なので、これから学校に行く用事があるって嘘をついて帰ってもらいました。

土曜日だったし用事なんてありませんでしたけど、これ以上他人を部屋の中に入れてるのもしんどかったので。

管理人さんに対しては結果的に悪いことしたなって本当に思ってます。

結局防犯カメラ、最後まで直してなかったんですね。
私がやってる「何かマズいこと」に、勝手に共犯者だって思ってたのかもしれませんね。

んー。
この事件と防犯カメラ故障事件が同一化されるのはちょっと嫌だなぁ。
これは私と先生だけの物語なのに。

助演男優賞はハヅキくんだけで十分です。