私の手から落ちた箱はひっくり返って地面に着陸して、中のプリンアラモードもぐちゃぐちゃになって散らばりました。

炎天下でした。
プリンもフルーツもクリームもみんな焼けるのかななんて思いました。

先生は何も言わないで行ってしまいました。
最後まで私のことは睨みつけてました。

私はまたケーキ屋さんに入りました。
一部始終を見ていたのであろう店員さんが私からパッと目を逸らしました。

「あの。」

「あ、はい。」

「コレ、二つください。あと、このろうそくも。」

「あ…、えっと…はい。」

「それとアレ、ごめんなさい。」

「いえ…あの、はい。片付けときます。大丈夫ですよ。」

何が大丈夫なんだろう。
あぁ、掃除は大丈夫、か。
でもプリンアラモード。せっかくの作品なのに。

「ごめんなさい。」

「いいえ、こちらこそ。」

こちらこそ?
このお姉さん相当焦ってるんだろうな。優しい人なんだろうなって思ってたらちょっと笑っちゃいました。

もう一度同じ状態になった箱を受け取ってお店を出ました。
アスファルトの上でぐちゃぐちゃになったプリンアラモードは、それでもゼラチンでコーティングされたフルーツがキラキラしていて綺麗でした。

家までの道。
平気な顔をして歩きながら、本当は背中がゾクゾクして鳥肌が立ってたまりませんでした。