わざと見せつけるようにケーキの箱を開けて、先生の顔に近付けました。

思った通り、先生は眉間に皺を寄せました。

「なんでコレを…。」

「いいでしょ、別に。」

「…。」

「あ!もしかして!」

急に大きな声を出した私に驚いて、先生はやっと私を見てくれました。

そう、その目。
もっと見て。私だけを。
その瞳はずっと、私専用にして!

ちょっと前まではもっと甘い色を含んでいた先生の目。
今は冷たくて優しさなんて感じないけど、いいの。
分かってる。

ハヅキくんが先生の元に戻ればきっと。
私の想いがどれだけ大きいか知ればきっと。

先生はまた私を好きになる。

「もしかして、ハヅキくんって八月生まれですか?」

「…。」

「やっぱそうですよねぇ。ハヅキくんですもんね。ケーキ買いに来たんですか?」

「…。」

「ごめんなさい、気に障りました?買っても食べさせてあげれませんよね。」

先生の眉間の皺はどんどん深くなりました。
怒りでしょうか?
あぁ…。なんて素敵。

「ねぇ、先生?なんでコレ見て驚いたの?」

「は?何が。」

「私のプリンアラモード見て驚いてたでしょう?なんで?もしかして先生のお目当てもコレ?ハヅキくんの好物ってプリン…」

「いい加減にしろよ!」

先生の手が伸びてきて、バシッてケーキの箱をはたき落としました。