それからまた自動ドアを出る時でした。

心臓がトクン、って大きく鳴ったあの感覚。
はっきりと憶えてます。

自動ドアから少し横に逸れた所。
大きなガラスの壁越し。
ケーキ屋さんのタペストリーが掛かった辺りに先生が立ってました。

もしかして私が入っていくのが見えて、待ち伏せしてるのかも。
夏休みに先生に会えるなんて。
しかもこんなタイミングに。

これってハヅキくんが示し合わせてくれたみたいじゃん!
あの子まさか、そんな力があるの!?なんて思いました。

でも、先生は私のことなんて見てませんでした。
ボーッと虚ろな目でケーキのショーウィンドウを見てました。

「先生?」

お店から出て声を掛けると、先生は目に見えてビクッと肩を揺らしました。

「…なんで。」

「またなんで、ですか?」

「…。」

「女子高生が一人でケーキ屋さんに居たら変ですか?」

「あぁ…いや、ごめん…。」

先生は私と目を合わせてくれません。
私はずっと先生の目を見てたのに。

「先生こそなんで?」

「いいだろ別に。」

「別にいいですけど、私が気になったから聞いただけです。私はコレを買いに。」