先生、私がヤリました。

似合ってるのは本当でした。
思いっきりショートカットが似合うなんて、元がいい証拠です。

でもどんな慰めも意味を成さないことは分かってました。
私もそうだったから。

私のおばあちゃんもね、リズちゃんのお母さんと同じ考え方でした。

おばあちゃんがもっと若かった頃は、親が仕事の週末なんかによく預けられてました。

掃除やお裁縫が好きで料理も上手。
結構活発だったんです。

小学五年生くらいまでだったかな。
時々預けられるたびに、私は近所の床屋に連れていかれました。

街中にある美容室とかお洒落なとこじゃなくて。
近所のおばさんが趣味程度にやってる、これまた近所の客で成り立ってる床屋です。

内装もよく憶えてます。
自宅の二階を床屋のスペースとして改装していて、カーテンはレースのフリフリだし、出窓のとこには熊のぬいぐるみとか旅先のお土産物屋さんで売ってそうなオルゴールとか置いてあって、やたらとファンシーな部屋でした。

おばあちゃんのオーダーはいつも決まって「とにかく短く」。
前髪もサイドも女子にしては信じられないくらい短くて、よく言えばおかっぱ。

嫌で嫌で堪りませんでした。
高学年に上がった頃にようやく母が「いい加減やめてあげて。」って言ってくれたんです。

それからはトラウマのように髪の毛はロングを守り抜きました。
嬉しくてしょうがなかったですね。

今はショートですけど、髪は女の命って言うじゃないですか?
だからね私、先生の為に捧げたんです。私の命を。

この計画の決意として切ったんですよ。

「大人になったら伸ばせるよ。」

そう言ったらリズちゃんはコクンと頷きました。