先生、私がヤリました。

ピンク色の傘には塩化ビニルだかなんかで作った丸くてペラペラのネームタグがぶら下がってました。

「リズ」

子どもの字でした。
玄関までの感想。
傘とサンダル、ヒール以外にこの部屋ではまだこの少女はひとりぼっちでした。
消しゴムのことで泣いてくれたあの女の子以外は。

この子にしよう。
絶対この子がいい。それ以外考えられない。

ドアを開けて玄関のドアから出てきた少女を一目見た時から私の頭の中にはもう、消しゴムの女の子は居ませんでした。

「リズちゃんっていうの?」

「…うん。なんで知ってるの?」

「傘に名前が。」

「そうだった!」

「いい名前ね。」

「ありがとう。」

「髪の毛、すごく短いね。」

リズちゃんは髪の毛を指先ですくって、恥ずかしそうに俯きました。

「ほんとは友達みたいに長くしてみたいんだけど、すごく短くしてれば後がラクだからってお母さんが。」

「お母さんが?」

「うん。いっぱい髪の毛切りに行かなくて済むからって。」

「そっか。似合ってるよ。」

「…。」