先生、私がヤリました。

アパートの三階に戻りました。

いつ戻ってくるのか、そもそも戻って来ないかもしれないのに、少女は律儀にドアの前で私を待ってました。

アパートの住人に何してるのって聞かれたらなんて答えるつもりだったんでしょうか。

「中、入らないの?」

「お姉ちゃんを待ってた。」

「…そうだね。誰かに会った?」

「誰か?」

「ここに住んでる誰か。」

「ううん。」

外壁は固めたコンクリートがポコポコ浮いていて、内壁は深緑でつるりとしてました。

住人の小さい子ども…いやひょっとしたら大人かもしれませんけど、下手くそな犬や猫の落書きがありました。

湿度が高くて不快なのに内壁に触ると少しひんやりしてました。

「ねぇ、もし良かったら中に入れてくれない?」

「家の中に?」

「そう。ダメかな?あなたと二人だけで内緒のお話がしたいの。」

「…分かった。」

やっぱり少女の行動には一貫性がありませんでした。
最初にドアを開ける時は警戒してたのに、その他のことにはあっさり応えてくれます。

少女がまた重たそうにドアを開けようとするので少女よりも高い位置からドアを引いてアシストしました。

「重たいね。このドア。」

「前はもっと軽かった。」

「そう。」