俺を嫉妬させるなんていい度胸だ〜御曹司からの過度な溺愛〜

 オフィスビルのエントランスに暁が入った瞬間、その場の空気が一瞬にして変わる。それは、いつもの事だ。大概の者は、すっと端に避ける。

 女性の下心には、暁だけでなく駿も敏感に感じていた。

 暁がいることで、緊張感が漂っているエントランス。この日は、誰にも予想できない出来事が、ふたりの数メートル前で起こった。

 ――ビタッ

 痛そうな音を響かせて、漫画かと突っ込みたくなるほど盛大に、女性がこけたのだ。

 ――シーン
 
 辺りには何とも言えない空気が流れて、静まりかえる。

 暁の機嫌は一瞬にして急降下したのが、駿には手に取るように伝わった。

 『ピキッ』と音が聞こえそうなほど、眉間に深いシワを寄せている……。

 女性はわざと暁の前でこけて気を引こうとしたのだろうか?

 判断できなくて戸惑う。ただ、駿の目線の先には女性が掛けていた眼鏡が飛んで落ちていた。