実家に入ると全員揃っていた。

 父は通常通り、兄は難しい顔、兄嫁はニコニコ笑っている。

「お邪魔します」 

「さあさあ座って」

「これ、旅行に行ってきたお土産です。みなさんで」

「まあ。こんなにたくさん?ありがとう。芹、旅行はどうだった?」

「素敵な旅館で最高だった〜」

「え〜いいなぁ。私も落ち着いたら行きたい」

 女三人が盛り上がる。

「コホン」

 兄のわざとらしい咳払いで一旦静かになった。

「で?今日は何のようだ?」

「はい。お義父さん」

 暁は姿勢を正し、話を振ってきた兄ではなく、父親に視線を向けた。

「はい」

 空気で何を言われるか感じたようだ。

「芹さんと交際して、まだまだ時間的には短いですが、心の繋がりと相性は間違いないと確信しています。時間ではない絆を信じて、芹さんと結婚させていただけないでしょうか。お願いします」深く頭を下げた。

 一同、思っていたより丁寧な挨拶に、呆気に取られる。

「新城さん頭を上げてください」

 父の言葉に、暁は頭を上げる。