「私の住まいじゃないので無理です」

 濁していたら欲求が増して行きそうで、そこははっきり拒否を示した。

「役に立たないわね。本当に暁様と関係ないわよね?」
 
 やはり疑われてはいるようだ。このまま解放してもらえるのだろうか……。

「疲れてるので帰っていいですか?」

「何?都合が悪くて逃げるの?」

「……」

 何を言っても墓穴を掘りそうで思わず黙ってしまった。

 ここは、エントランスに続くマンションの敷地内だ。当たり前だが、エントランスに入る車が通る。今も一台の車がエントランスに向かって入っていった。

「ちょっと何か言いなさいよ」

 先程までより声を荒げだし、怖くなってきた。これが本来の花澤の姿なのだろう。

 そこへ……。

「何してる!?」

 暁がエントランスから走ってきた。暁の後ろには駿の姿も見える。

「きゃ〜暁様。私に会いに来てくれたの?」

 なんてお目出度い思考の持ち主なのか、芹に詰め寄っていた姿からは一変、今にも暁に抱きつきそうだ。
 
「お前、ここの住人じゃないだろう?」