「あそうなんだ。じゃあその小説おすすめだよ。私の大好きな小説なんだけど、活字が苦手な人でも読みやすいし何よりも泣ける!」


「ふっ、あはは!」



突然、何が面白かったのか吹き出した蓮くんに、呆気にとられる。



「え、なに?」


「いや、俺の母親と全く同じこと言うもんだからおかしくて。俺の母親、小説とか大好きでよく勧められてて。中でもこの小説が一番好きだって言ってたから、せっかくだし読んでみようかなって思って今日借りに来たんですよ」


「そうだったんだー。蓮くんはお母さんが大好きなんだね」


「…え?」


「だってお母さんの大好きだっていう小説読むなんて、よっぽどお母さんのこと大事に思ってるんでしょう?きっと感想とか教えてあげたら、お母さん喜ぶと思うよ」


「…そう、ですね。…すごく大事で大好きです」



そんな風に思ってくれる息子がいるなんてお母さんも幸せだろうね、と言葉を続けようとしたが、蓮くんのどこか遠くを見つめる瞳がすごく悲しそうで、思わず呑み込む。



「蓮…くん?」


「え?」