陽菜先輩と過ごす昼休みは、変わらず毎日続いた。


そして、母さんはまだ目を覚ますことはなかった。



「蓮なんか最近楽しそうだよなー」


「え?」



バスケの試合をしているクラスメイト達を、隅っこに座りボーと眺めていると愛翔が馴れ馴れしく肩を組んできた。



「正直さ、心配だったんだよ。ほら、おまえの母ちゃん、まだ起きねぇじゃん?蓮が自分のこと責めて落ち込んでたの知ってるから、元気ないままだったらどうしよーなんて言おーとか思ってたから。けど、ちゃんと毎日学校来てるし、感情もちゃんと生きてるから安心した」


「ふっ、なんだよそれ。別に心配されなくても、俺は愛翔ほど弱くないから大丈夫だよ」


「おー!?おまえ言うなあ!?俺がことごとく失恋して号泣してるの、馬鹿にしてんだろー!?」


「そこまでは言ってねーよ」



ペシッと愛翔の頭を叩く。



「おーい、愛翔。次試合ー」


「おー!蓮、俺の活躍そこで見てろよー!」



愛翔に適当に相槌を打ちながら、再び訪れた静寂に目を閉じる。


目を閉じて浮かぶのは、決まって陽菜先輩の笑顔だ。


この笑顔が見れれば、俺の心が死ぬことはまだない。