「奏多ってば、歩くの早いよー」


「…かった?」


「え?」



奏多が赤い顔を片手で隠しながら、見下ろしてきた。



「陽菜と一分一秒でも一緒にいたいって、きもかった…?」



不安そうな瞳で見つめてくる奏多が、大きな犬のように思えてふっと笑みをこぼす。



「そんなわけないでしょ。私も同じだよ」



安心させてあげるために、奏多の手を握る。



一分一秒でもこの幸せで愛おしい毎日が続くといい。


心からそう思った。