たとえこの世界から君が消えても

「俺たちが初めて会った日に、母親に気持ちを素直に伝えられないって話したじゃないですか。帰ったらちゃんと伝えるって言ったけど、そんなことできないんです。素直に気持ち伝えるのが苦手で、嫌いって言っちゃった日に母親は事故で大けがして、謝ることもできずに今も病院で眠っています。あの日、俺がちゃんと素直になれてたら…そう思ってももう遅いんです」



蓮くんの握り締められている拳が、微かに震えていることに気づく。


きっと話すだけでも辛いのに、私のために話してくれているんだ。



「陽菜先輩はまだ間に合う。自分の気持ちを押し殺さないで、後悔しないで」


「…うん、そうだよね。私、変わりたい。ちゃんと自分の気持ち、伝えてみる」



蓮くんは優しく微笑むと、小さい子にするかのように、優しく頭を撫でてくれた。


それだけで頑張れる気がするから、不思議だ。



タイミングがなかなか見つけられず、気づくと放課後になっていた。



「ねえ」



今日は駅前にできたカフェに行きたい、と盛り上がる加奈たちを、怒りを露わにした佐倉さんが鋭く睨みつけてきた。