たとえこの世界から君が消えても

驚いて顔を上げると、小説を開いたまま、心配そうな表情を浮かべる蓮くんと目が合った。



「ここに来てからの陽菜先輩のため息の数です。最近元気ないですよね?何かありましたか?」



…どうやら蓮くんにはお見通しのようだ。



「…高二になって入ったグループがあるんだけど、私には合わなくて。でも今更抜けることもできないし、怖いの。人を平気で傷つけてるところなんて見たくないのに、止めたいのに…。でも、怖くて私は何もできない…」



一度崩壊してしまった本音は、もう止められない。



「昔から、流されっぱなしの自分が大嫌い。自分の気持ちを素直に伝えられないこんな自分が、嫌いで仕方ないの…っ」



泣くつもりなんてなかったのに、涙は止まってくれない。


そんな私を蓮くんがそっと抱きしめてくれた。



「自分のこと嫌いだなんて、そんなこと言わないでください。俺は陽菜先輩のこと好きですよ」



力強い蓮くんの力と声に、涙がさらに溢れる。



「陽菜先輩が思ってること、隠さずに伝えるべきです。…俺みたいに、後悔しないでください」


「…え?」



抱きしめられていた力が弱くなり、そっと顔を上げると、今にも泣き出しそうな蓮くんと目が合う。