たとえこの世界から君が消えても

休み時間になったが、佐倉さんは自席で一人、スマホをいじっている。


朝はあんなに騒がしくしていた男子も、女子も、加奈の視線が怖いのか、誰一人話しかけに行く人はいない。



「ぼっちうけるんですけど」


「転校初日から男に色目使ってるからだよ、ビッチー」


「早く席変わってくんないかなー。ビッチ女に隣にいられるの嫌なんだけど」



すぐ隣に佐倉さんがいるというのに、平気で悪口を聞こえるような声で言っている加奈たちに、こっちが気分が悪くなってくる。



「…あのさ」



ずっとスマホに視線を落として黙っていた佐倉さんが、こちらを力強い瞳で睨んできた。



「別に私、色目使ってないし。私が可愛くて男子が騒いだからって嫉妬したの?ごめんね、可愛くて。あんた達が可愛くない理由教えてあげようか?こういうくだらない悪口で盛り上がって、人の気持ち考えないからだよ。心がブスだから顔まで…」



最後まで言い終わらないうちに、佐倉さんが加奈に突き飛ばされ、近くにあった机ごと倒れる。



「いった…。何すんのよ!」


「あんた、今なんて言った?」



ぐいっと加奈が佐倉さんの胸ぐらを掴んだ。