いっしょに寝ようよ。




「これ、」

無事に家に送り届けてもらったあと、空っぽになったお弁当箱を受け取る。
律は、『ごちそうさまでした、って伝えておいて』の言葉を欠かさない。


「ありがとう。明日もよろしくね」

右手を小さく振ってお見送りする。
予定なら、律はこのあとバイトに行くはずだ。
それなのに。

「……あ。借りたいものがあったんだ」
「え、なに?小説?」
「うん。まぁ、そんなところ」
「ふぅん」


律は、小学校の低学年以来、この部屋に足を踏み入れていない。
起こしてくれるときは、部屋のドアを一回叩き、「時間」と短く声を掛けるだけ。
ズカズカと入ってきて、布団をめくるようなことはしない。

何年振りかに部屋に招き入れるから、ちょっと緊張しちゃうけど。


「どれ?どの小説?」

本棚の前にしゃがみ込み、声を掛ける。
律は入口に立ったまま、ぐるりと部屋を見渡している。
当時の部屋の雰囲気なんて、覚えていないだろうな。

カーテンも、壁紙も。SNSで見つけたオシャレな部屋を真似させてもらって、最近になって替えたばかりだ。


「ねぇ。なにを貸せばいいの?」

問い掛けたって、律は無言のまま。
スタスタと一直線にベッドに向かう。