寝不足のせいか、頭が重い。
ぼうっと窓の外を眺めていると、後ろに流れていく景色が歪んで見えて、クラクラする。
「はぁ…」
満員電車に揺られながらチュン太を想うと、もう、ため息しか出てこない。
チュン太…。
「ハァ、…ッ」
チュン太……。
「ふぅ、…っ」
チュン………。
「スーッ……」
待って。
わたしじゃない。
……左の、左の後ろ。
やけに体をくっつけてくる。
電車の揺れに合わせて、ピタッと。
そいつの息が、髪にかかる。
一歩前に出て避けようにも、すぐ目の前がドアのせいで逃げられない。
……律!
腹立たしいからと、律を遠ざけてしまったことが悔やまれる。
満員電車では、そばにいてもらうべきだった。
少し離れた場所に立つ律に視線を送る。
乗客の隙間から見え隠れする律は、視線を落としたまま。
……スマホだ。
律に、「痴漢」って送ればいい。
そう思ってスマホを取り出したとき、スカートの裾が不自然に揺れた。
「………っ、」
驚いた拍子に手からスマホが滑り落ちる。
鈍い音を立てたスマホを拾い上げるには、無理がある。



