身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました


 だいぶ暖かくなってきた三月中旬の今日、清々しい春空の下昴を自転車に乗せて到着したのは保育園。彼を下ろすと下駄箱まで手を繋いでいき、自分で靴を履き替えるのをしっかり見届けてからポンと頭を撫でる。


「じゃあね、昴。今日もいっぱい遊んできてね」
「おー」


 男の子らしい返事をするわが子に笑い、小さな手とタッチした。いつも笑顔が素敵な保育士のお姉さんに「いってらっしゃい」と明るく見送られ、園を後にする。

 昴はいつも、私が完全にいなくなるまで玄関からこちらを見ている。自転車に跨り、発進する直前まで今日も手を振っていた。

 いまだにちょっぴり寂しさを抱きつつ、出勤時間までまだ余裕があるので一旦家に戻る。今日は姉が遅くなるらしいから、夕飯の準備をできるだけ済ませておこう。

 ペダルを漕ぎ、木漏れ日が清々しい並木道に差しかかった。肩下十センチくらいまで伸びた髪をなびかせ、まだ蕾もたいして膨らんでいない桜の木を見上げる。

 この時期になると毎年思い出す。月と桜が見下ろす夜、手を繋いで歩いた日のことを。

 今年は小さな手を繋いで、お弁当も持ってお花見をしよう。三年前の幸せな思い出に、また新しい春の色をつけ足していくんだ。