彼が半年間で得たものは、当然私との思い出だけじゃない。大事なものは他にもあっただろう。なにを失ったかすらもわからないのは、彼にとってどれだけつらいだろうか。

 妊娠を伝えたくて、早く会いたいとわがままを言ったのは私。出張の直後に会う約束をしなければ、嘉月さんが苦しむこともなかった。お母様に私のせいだと責められても仕方ないのかもしれない。

 しかし後悔は胸の奥に押し込み、少しでも元気づけたくて笑みを作る。


「焦らず、取り戻していけばいいと思います。同じ日は来ないけど、同じ記憶を共有した人はきっといるから、大丈夫ですよ」


 私の中には、あなたと過ごした日々が鮮明に残っている。できればこれからもそばにいて、その話を聞かせてあげたかったな。

 鼻の奥がツンとする。さりげなく瞬きで涙を散らしていると、嘉月さんはこちらを見つめていた綺麗な瞳を柔らかく細めた。


「君は変わった人だ。進んで俺のところに来て、こんな風に話しているなんて。いつも不機嫌そうな顔をしていて怖いって、特に女性には一歩引かれるんだが」


 お見合いをした後、バーで話した時と似た内容が彼の口から出て、胸がざわめく。