「最後に、嘉月さんとふたりで話をさせてください。無理に思い出させるようなことはしませんから」
真摯に頼み込むと、少しだけ思案するように目を伏せた彼女は、「わかったわ」と頷いて歩き出す。その場を立ち去る彼女にもう一度軽く頭を下げ、深呼吸をしてドアに手をかけた。
「こんにちは」
なるべく明るい声をかけて中に入ると、上体を起こして本を読んでいた彼がこちらを振り向く。その目が相変わらず睨むように細められていたので、懐かしさを感じて少しだけ口元が緩んだ。
しかし彼はすぐに驚きを露わにし、やや目を丸くして「どうも」と会釈した。やっぱり他人行儀だなと、わかってはいても寂しくなる。
ゆっくりベッドに近づいていくと、この間より包帯で覆われた部分が少なくなってきた嘉月さんが不思議そうに言う。
「君、この間も来ていたよな。誰かのお見舞い?」
「はい……友達が、入院していて。あなたもここにいると、その、風の噂で知ったので」
「噂? 俺はそんな有名人じゃないが」
たどたどしくでたらめを言う私に、彼は怪訝そうに眉根を寄せた。嘘は苦手なので、「まあ、細かいことは置いておいて」とへらっと笑って話題を変える。



