身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました


 それから約一カ月が経ち、あっという間に五月も下旬に差しかかっていた。

 私たちは二週間ほど前から半同棲状態になっている。週末はほとんど嘉月さんの部屋で過ごしているし、平日も私の休みの前日に泊まることもしばしば。

 プライベートの嘉月さんは、クールな顔に似合わずとびきり甘い。愛の言葉を自然に囁いてくれるし、私が甘えてくっつくとすぐにキスをして、ベッドに入れば貪欲に求めて骨抜きにする。

 そんな彼に、私は人生最高にして最後の恋をしているのだ。

 入籍は予定通り九月にするつもりで、そろそろ結婚式の準備も始めようと話しているところ。今度の休みには式場を見学しに行きたいな。

 ヱモリのカウンター内で雑用をしながら、近い未来の計画表を頭の中で広げて口元を緩める。今やってきた女性客にも、そのままの顔で「いらっしゃいませ」と挨拶していた。


「すみません、ブルーマウンテンをひとつください。テイクアウトでお願いします」
「はい! ありがとうございます」


 元気に接客をして、今日は不在のマスターの代わりに自分でコーヒーを淹れるため生豆を焙煎し始める。

 私はバリスタと名乗れるほどではないが、この店で提供するコーヒーの淹れ方はマスター直々に伝授してもらったので、彼がいないときは私が作っているのだ。