「ヱモリに嘉月さんが来るのを、いつも楽しみにしてたんです。バレンタインだって、本当はサービスじゃなくて本命チョコを渡したいくらいだった。だから、今日嘉月さんに会えて本当に嬉しくて」


 目まで覆っていた両手を鼻までずらし、赤くなっているに違いない顔を半分さらして彼を見上げる。


「こんな奇跡、運命だと思わないほうが無理です」


 強制的なお見合いで夢みたいな展開になるなんて……と、いまだに信じられない気持ちで言った。

 そんな私をやや驚いたように見つめていた嘉月さんが、ふいに手を伸ばしてくる。〝よく見せて〟と言わんばかりに、顔を隠す私の手をそっと掴んで除けた。

 そのままきゅっと手を握り、甘さを含んだ真剣な瞳に私を映す。


「これから、もっと君を愛していきたい。俺にその権利をくれるか?」


 幸せしかない未来を予感させる言葉に、私は激しく胸を高鳴らせながら迷いなく頷く。


「もちろんです。その権利、私にもくださいね」


 快く答え、手を握り返して微笑み合った。

 私の平凡な人生が、万華鏡のようにぐるりと動いて輝きだす。好きな人と一緒になれる奇跡に感謝しながら、私たちは婚約者となった。