「……俺は政略結婚には乗り気ではなかったし、きっと相手の女性も俺の愛想の悪さを知れば破談にするだろうと思っていた。でも、相手が君で嬉しかった。知っている人だからじゃなくて、都さんだったから嬉しかったんだ」


 誠意を感じる言葉が耳に届いて、心の奥から温かい気持ちが込み上げてくる。遠慮がちに隣に目を向けると、冷たさなど微塵も感じない熱い眼差しに捉えられる。


「俺は、たぶん君に惹かれている。君との関係をこれきりにしたくない」


 ──心臓が大きく波打った。まさか、彼がこんな風に想ってくれているなんて。

 願ってもない言葉がもらえて、喜びで胸が震える。過去に付き合った人はいるけれど、想いが通じてこんなに感激したことはない。

 悶えたくなるのを我慢して、バッと両手で顔を覆った。咄嗟に私の肩に手を置く嘉月さんは、戸惑っているのだろうとわかる。


「都さん?」
「……私もです」


 顔を覆って俯いたまま呟くと、肩に置かれた大きな手がぴくりと反応した。