ヱモリに来ているときに怖い顔をしているのも、きっと目が疲れているせいなのだ。そして、一歩引いている女性の中には里実さんのような隠れファンも一定数いると思う。

 やっぱり中身はとってもいい人なのだと再確認できて嬉しくなる私に、嘉月さんが視線を寄越す。


「でも、都さんは最初からしっかり俺と目を合わせてくれていた。君だけだよ、俺の心を柔らかくしてくれるのは」


 自分が特別なように感じる言葉にドキッとしていると、「プライベートでチュウカマンの話ができるのもね」と続けられた。ちょっぴりまぬけな初めての会話が蘇り、また笑いをこぼす。

 そこでカクテルが運ばれてきて、乾杯をして口に含んだ。いつの間にか緊張は解れていて、肩の力を抜いて私も自分の気持ちを打ち明ける。


「確かにちょっと冷たそうで近寄りがたい印象はあったんですけど、嘉月さんはちゃんと挨拶をしてくれるし、テーブルの上も綺麗にして帰っていくし、素敵な人だなと思っていましたよ」


 正直に伝えると気恥ずかしくなり、目を泳がせてもう一度グラスに口をつけた。逆に、隣からコトンとグラスを置く音が響く。