「たぶんこれを贈って、初めて君と出会った時の話をしようとしていたんだろう。映像記憶がなければずっと思い出せないままだったかもしれない。初めて自分に感謝するよ」
嘉月さんは嬉しそうに言い、唖然とする私の左手を取って薬指にするすると滑らせる。それはぴたりと嵌まり、揺れる視界の中で優雅にきらめく。
「ほんとだ……ぴったり」
「結婚指輪、もう手配済みなのに。しかも似たデザインのものを」
暴露している彼がおかしくて、泣きそうになりながらもクスッと笑う。
いつも私や昴のために一生懸命になってくれる彼が、愛しくて仕方ない。
「嘉月さん、ありがとう。すっごく嬉しい。ほんと、幸せ」
感極まって震える声で伝えた。彼は情熱的な瞳で私を見つめ、頬に手を当てる。
「都、俺と結婚して。これからも毎日、愛してると言わせてくれ」
二度目のプロポーズに、涙が溢れて彼の指を濡らした。
いつかの甘いひと時に囁かれたものと同じ言葉。これは思い出したわけではないだろう。でも彼の気持ちが、あの頃となにひとつ変わっていない証拠だ。
了承する代わりに、私は自ら彼に唇を寄せる。涙味のキスが甘さしか感じなくなるまで、私たちは何度も唇を重ねた。



