こちらにやってきた父が、ちょっぴりいたずらっぽい顔をして謝る。
「勝手に連れてきてすまない。やっぱり青來社長と芳枝さんにも早く会わせたいと思って、翠にここへ寄るよう頼んだんだ」
私と嘉月さんの間では、昴を会わせるのは結婚を認めてもらってからがいいだろうという話になっていたのだが、早く会わせたい気持ちももちろんあった。父が実行してくれたのはありがたいので、彼と目を見合わせてふたりでお礼を言った。
父はお母様に目を向け、穏やかに微笑む。
「最高に可愛いでしょう。芳枝さんにとっては孫でもあるんですからね」
その言葉に、彼女はわずかに瞳を揺らしたように見えた。
おもむろに席を立った彼女は昴の前にやってきて、身体を屈めて目線を合わせる。
「……あなたが、昴くん?」
じっと見つめて問う彼女に、昴は私にぴったりくっつきつつも頷いて「こんにちは」と挨拶をした。
その時、お母様の表情が珍しく緩んだので私は目を見張った。彼女がこんなに優しそうな顔をするのは初めて見た気がして。
「小さい頃の嘉月にそっくりね」
柔らかな声で呟いた彼女の瞳は、わが子を見るように優しくて、幼い頃の嘉月さんを思い返しているのだとわかる。彼との子だと納得してもらえたのだろう。
お母様は一度姿勢を正し、懺悔するように力ない瞳でこちらを見つめる。「あなたたちの幸せな時間を奪って、本当にごめんなさい」と深く頭を下げた。



