「もし不貞行為があったなら、私が味わったつらさを嘉月にまで感じさせてしまうって、そればかり考えて都さんを突き放した。逆に、女手ひとつで子供を育てるつらさを、あなたに味わわせてしまったわね」
お母様は申し訳なさそうに力なく言い、肩を落とした。
人を信じるって、実は難しいことなのだろう。裏切られたらつらいから、その前に遠ざけたくなるのもわかる。
だから彼女を責めるつもりはないけれど、この際私がどう感じていたかも伝えておきたい。
膝の上でぐっと手を握り、背筋を伸ばして口を開く。
「信じてもらえていなかったのはショックでした。嘉月さんと一緒に、昴の成長を見られなかったことも。あの時、お母様たちの反対を押し切ってでも、彼を支える選択をしなかったのは間違いだったかもしれないと、今も思っています」
正直に本心を伝えると、お母様と伯父様は決まりが悪そうにまつ毛を伏せた。そんなふたりに、「だけど」と明るい声を投げかける。
「私も母親になったからこそ、お母様の気持ちもわかるようになりました。自分の子供をつらい目に遭わせたくない。守れるのは自分だけだっていう、使命感みたいなものが生まれるんですよね」



