『ずっと前に』というひと言が、自分の記憶は正しいと裏付けているようで、私は目を見開いた。まさか、あの男の子は──。
信じられない思いで、凛とした彼を見つめる。
「俺のそばには都がいてほしいし、ふたりを幸せにできるのは俺しかいない。仕事と家庭、どちらも守れないほど不甲斐ない男じゃない。だから、結婚を認めてくれ」
彼のぶれない声と瞳に胸が熱くなる。私も思いをすべて伝えたくて、背筋を伸ばして口を開く。
「嘉月さんは、周りになにを言われても私を信じて、一緒に生きていく道を選んでくれました。そんな彼を、絶対に裏切るようなことはしません。だからどうか、私たちを見守っていてください」
鈴加さんに浮気疑惑をチラつかされたにもかかわらず、彼は私を信じ続けてくれている。記憶を失っているのだから、嘘を信じてしまっても致し方ないのに。
こんなに愛に溢れた彼を大切にしないわけがない。その強い気持ちを表して頭を下げると、嘉月さんはわずかに口角を上げ、お母様は私を静かに見つめていた。
数秒の間を置いて口を開くのは、表情を曇らせている伯父様だ。



