身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました


「都、お疲れ様。コーヒーありがとう」
「嘉月さん、びっくりした! ブースにいるとは思わなかったから」
「悪い。それは伝えそびれてた」


 苦笑を漏らした彼は、伯父様とお母様に向き直り、真剣な面持ちになって言う。


「明河さんが場所を貸してくれるそうだ。そこで話したい」
「ああ、わかった」


 伯父様が了承すると、嘉月さんは私の背中に手を当てて先に歩き出した。展示会は鈴加さんたちに任せてきたらしい。彼がそばにいてくれると一気に安堵感が増す。

 ひとつ上の階にある、社員も来客者も使えるラウンジに入り、奥まった静かな場所のテーブル席についた。テーブル同士の間隔も離れているし人もあまりいないので、周りを気にせず話ができそうだ。

 落ち着いたところで、伏し目がちなお母様が口を開く。


「私も知らないところで明河商事と取引していたなんてね。結婚話を有利に進めるためかしら」
「俺の意思はここまで固いんだってことをわかってもらいたかったんだよ。そうでもしないと、母さんを折れさせられないだろうし」


 淡々としているもののどこか圧を感じるお母様の言葉に、嘉月さんはすぐにきっぱりと返した。空気がピンと張り詰めた気がして、緊張感が漂う。