嘉月さんにはもちろん、ヱモリが閉店するかもしれないという話をした。その時は『なんとか残したいよな』と共感してくれただけだったから、こんな援護をしてくれるとは思いもしなかった。
コーヒーの提供が一段落したようで、いつの間にか私の隣に来ていた里実さんも、今の話を聞いて気づいたらしい。
「まさか青山さん、ヱモリのために……?」
「そう、ポットサービスを提案してきたのも彼だよ。店も、ヱモリの皆も助けたいから協力してほしいと言ってね」
詳しく話すのは父だ。この人があの案をひらめくなんて意外だと思っていたら、本当は嘉月さん発信だったとは。
「嘉月くんなら、お金を出して協力することはいくらでもできるだろう。だがあえてそうせず、こんな回りくどいやり方をしているのは、客が自らヱモリに足を運ぶきっかけを作るのが大事だと考えたからじゃないかな。マスターの情熱を取り戻すために」
父は「実際、俺が援助すると言っても断られたからな」と苦笑した。
嘉月さん、そんな風に考えてくれていたんだ……。マスターの繊細な心の内まで理解してくれて嬉しい。



