身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました


 そんな顔で、しかもそんな苦労をして選んだのだと言われたら美味しいとしか答えられないよね……いや、彼は本当のことを言っているんだけど。どこで知ったのよ、マスターの武勇伝は。

 内心苦笑していると、彼は少しだけ表情を柔らかくして続ける。


「店内でいただくと、もっと美味しいんですよ。それに、昔の雑貨が国内外問わずたくさん置いてあって、どれも興味を引かれるんです。貴重な掘り出し物もあるので、宝探しをするような気分になれるかもしれません」


 そこまで聞いて、私は彼の意図をようやく理解した。商品に関連付けてヱモリの宣伝をし、少しでも多くの参加者に興味を持ってもらおうとしていることを。人を呼び込み、店の危機を救おうとしているのだ。

 胸が熱くなるのを感じながら、彼をまっすぐ見つめる。


「そんなヱモリに行くたび、懐かしくて温かい気持ちになるんです。古いもののよさを再確認させられて、ここにあるおもちゃを作るきっかけになりました。店はこのビルのお隣ですので、ぜひ気軽にお立ち寄りください」


 彼の話に興味深げに頷いている人が何人もいて、気分が高揚する。さっきお母様が言っていた『すべてあなたのためよ』という意味はこういうことでもあったのか。