身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました


 三日後の木曜日、私と里実さんは例の電話で頼まれた件を実行している。

 ヱモリのコーヒーを入れたポットと紙コップ、砂糖やミルクも持って、明河商事の本社ビル十階を往復している。ここのフロアで行われる社内展示会に来た人たちに、コーヒーを振る舞うためだ。

 社内展示会というのは、取引先の業者向けにヱモリが取り扱っている商品や自社製品を紹介する場のこと。

 雑貨やら食品やらを所狭しと並べ、メーカーの方々がそれらのアピールをしに来るもので、年に数回行っているらしい。二日間に渡って行われるもので、今日はその一日目だ。

 いくつもポットを運ばなければならないので、二往復目のエレベーターに乗り込み、今日はエプロン姿の里実さんが感心したように言う。


「コーヒーのデリバリーって、ウチみたいな店は人も足りないから無理かと思ってたけど、お隣さんなら移動する時間も省けるしアリだったね」
「うん。お父さんからそんなアイデアが出るとは意外だったな」


 そう、あの時電話をかけてきたのは私の父で、ポットサービスができないかという相談をされたのだ。