「私、今月一杯で秘書課から異動することにしたの。今まで引っ掻き回して悪かったわ」
「鈴加さん……」
初めて謝罪の言葉を口にしたことにも驚くが、まさか秘書を辞めてしまうとは。
少々責任を感じるも、彼女はいたずらっぽく口角を上げる。
「副社長の新しい秘書は、若くてとびきり可愛い子になりそうよ。強面な人がタイプだって。せいぜい奪われないように頑張って」
「えぇ!?」
綺麗に微笑みつつ最後に爆弾を投下して、鈴加さんは颯爽と帰っていった。
残された私は、ちょっぴり呆れた笑いをこぼす。今のは本当か冗談かわからないけれど、とりあえず彼女とのわだかまりがなくなってよかった。
鈴加さんも朝陽くんも、新しい恋愛で幸せになってほしいと切に願う。
その直後、店内の電話が鳴り始めたので、朝陽くんといい雰囲気になっている里実さんの代わりに私が受話器を取った。
かけてきた相手は意外な人物。用件もこれまでにないもので、私は受話器を耳に当てながら目をしばたたかせていた。



